「エストニアは携帯電話で投票《は誤報です(2009年2月)(2013年&2015年追記アリ)

エストニアでは携帯電話を通じた投票は、できませんし、できるようにもなりません(09年現在)。
昨年末以来、いろいろなブログや記事などで、「エストニアでは2011年から携帯電話で投票ができるようになる《という旨の記事をよく見るようになっている。しかも日本語、英語を問わず。実はこれは、ある誤報に基づいた情報なのだが、その後も修正の情報が広がるどころか、エストニアでは携帯電話での投票が可能という誤解が相変わらず拡散しているようなので、記しておこうと思ったしだい。

英語・日本語にせよ、おそらく情報源をたどっていくと、そのほとんどはある情報源に行き着くはずだ。それは2008年11月5日のAP通信の記事である。実はこの記事が、「エストニアで11月3日に可決した法案により、2011年から携帯電話での投票が可能になった《と書いているのである。巨大通信社の情報ゆえに、一気に世界中の英字紙へ配信され、さらに各国の言葉にもすばやく翻訳されてしまった。 だけれども、これはAPの飛ばし記事・誤報なのである。
http://www.baltictimes.com/news/articles/21976

http://cyrusfarivar.com/blog/?p=1855
では、そのような誤報がなされてしまったために、現地の議員や専門家が誤解を解こうとしていると様子が示される。 とはいえ、その話はまったくの嘘っぱち・捏造というわけでもない。実際に、2008年の11月3日に、エストニアで投票に関する法案が通過したのは本当だし、携帯電話にかかわる話題であったのも本当なのだが、携帯電話で投票できるわけではない。エストニアでは、厳密な個人認証を経て、投票用のIDカードのようなものを発行したうえであれば、カードリーダーを併設パソコンによるインターネット上での投票が可能であることは割と広く知られているが、本法案はこの個人認証手続きとID発行に携帯電話を使用することができるよ、という修正にすぎなかったのである。結局のところ、2011年からも、携帯電話を片手に「パソコンの前に座って投票《することしかできないわけであって、携帯電話をめるめる操作して投票できるわけではないのである。

しかし、これを「携帯電話で投票できると勘違いして報道してしまったようだ《といくつもの現地メディアが報道しているし、たまにそのようなブログなどを見ることができる。

(2013年追記)
エストニアでもスマホの普及率は著しいものがあります。これらの携帯はPCと同じような挙動やブラウジングが可能となりました(OS等が厳密には違いますが)。そのため,未確認情報ではあるのですがこれらの携帯電話でも外部接続機器との連動で投票が可能になるかもしれないということです(知人に聞いた情報なのでどういうメカニズムかは上明)。ただ,いずれにしても上記時点での法改正は,携帯電話を個人認証カードの代用として利用可能,ということであり,携帯電話一つでその場で簡単に投票,といった類のものではなかったことを記しておきます。

(2015年追記)
エストニア選管トップにお会いする機会がありました。また,彼が著した博士論文も(公開以前に)個人的に読む機会がありました。結論から言えば,投票のために必要なソフトウェアが駆動する環境は,対応OSは依然として,Windows, Mac, Linuxのみで,AndroidやiOSへの対応予定は現状としてはないです。ゆえに,今後しばらくは携帯電話・スマホで直接投票することはできません。あくまで個人認証SIMカード入りの携帯電話・スマホを,PCで投票する際に必要な個人IDカードとして代替するのみです。(Windows, Mac, Linuxが動かせるUMPCなら話は別でしょうが,それは定義上携帯電話なのか微妙ですね)

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